勉強会開催報告:『サイロエフェクト―高度専門家社会の罠』

株式会社アイデアファンド(本社:東京都港区)は、2024年7月4日に『サイロエフェクト―高度専門家社会の罠』(ジリアン・テット)を題材として、肥大化しながら分業化していく組織のあり方をテーマに社内勉強会を開催しました。

本書の概要
1999年のラスベガス。ソニーは絶頂期にあるように見えた。しかし、舞台上でCEOの出井伸之がお披露目した「ウォークマン」の次世代商品は、2つの部門がそれぞれ別個に開発した、2つの互換性のない商品だった。それはソニーの後の凋落を予告するものだった。
世界の金融システムがメルトダウンし、デジタル版ウォークマンの覇権をめぐる戦いでソニーがアップルに完敗し、ニューヨーク市役所が効率的に市民サービスを提供できない背景には、共通の原因がある。それは何か――。謎かけのようなこの問いに、文化人類学者という特異な経歴を持つ、FT紙きってのジャーナリストが挑む。
企業であれ自治体であれ、高度に技術が発達している現代、あらゆる組織は「サイロ化」という罠に陥りがちである。分業化したそれぞれの部門が、それぞれの持つ情報や技術を部署の中だけでとどめてしまい、隣の部署とのあいだにも壁を作ってしまう。日本語では「タコツボ化」と呼ばれるこの現象は、どんな組織でも普遍的に存在するのだ。
経済学的な観点からすれば、身内での無駄な競争を生むような「サイロ」は、とにかく有害で無駄なものであるから、トップが「サイロ撲滅」の掛け声をかければ解決に向かう、と思いがちだ。ソニーの新しい経営者・ストリンガーも最初はそう考えた。しかし、彼は失敗した。壁は極めて強固で、一度できたサイロは容易には壊れない。
文化人類学者の視点を持つ著者は、「サイロ」が出来上がるには人間に普遍な原因があり、そのメカニズムを解き明かすところから始まる、と説く。人間に求められる技術が高度で専門的になればなるほど、サイロはむしろ必要とされるからだ。
人間は必ずサイロを作る、ならば、その利点を活用しつつ、その弊害を軽減する方法を探ろうとする画期的な論考が、本書である。(文藝春秋

ディスカッション
部署間でアイデアを共有しなくなったり、短期的な利益を追及しやすくなったりするなどの本書で言及されているサイロの弊害と、当社が過去に行ったリサーチとの共通点があげられました。サイロ化の原因が個人のプライドや考え方の違いに起因することがあるため、そのような場合は対話のプロセスを組み込むことが必要という意見がありました。一方で、サイロとそれによる弊害はどの業種にも存在しているものの、対話に時間を割くことができない業種やその習慣が根付いていない業種も存在するため、その場合の代替アイデアも共有し合いました。また、本書は人類学者によって書かれたものであり、人類学的視点が脱サイロに繋がると主張していますが、これに対して賛同できる部分とそうでない部分の両方が議論されました 

プレゼンターから一言
サイロという名の分類・分業・分割は私たちの日常の至る所に存在する自然かつ必要な現象であるため、即座に統合を目指すのではなく、むしろ分類を経由することの重要性に気が付くことができました。サイロによる弊害が深刻な問題を引き起こすことはよく理解できたものの、サイロを乗り越えるための手立てが今回の勉強会では明確にならなかったため、人類学が脱サイロに貢献できる方法を引き継ぎ考えていこうと思います。 (田口澪)

ideafundについて

「アイデアで資本主義を面白く」をコーポレートミッションとして掲げる株式会社アイデアファンドでは、文化人類学をはじめとするプロフェッショナルが集い、行動観察調査を通じてインサイトの導出や新しいビジネスシーズの創出に取り組んでいます。

代表取締役CEO:
大川内 直子(おおかわち なおこ)
会社設立:
2018年1月4日
事業内容:
文化人類学を応用した行動観察調査・分析・エグゼキューション
コーポレートサイト:
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