勉強会開催報告:『Minoritarian Liberalism: A Travesti Life in a Brazilian Favela』

株式会社アイデアファンド(本社:東京都港区)は、2024年11月21日に『Minoritarian Liberalism: A Travesti Life in a Brazilian Favela』(Moisés Lino e Silva)を題材として、本書で描かれている「自由」の複雑な成り立ちや、それを理解するための人類学的視点をテーマに社内勉強会を開催しました。

本書の概要
リオデジャネイロ最大のファヴェーラを舞台に、住民たちが多様な抑圧に対抗しながら独自の自由の政治を描き出す民族誌。規範的リベラリズムは、通常白人、成人、ブルジョア階級に属する「権利を持つ特権的な主体」の自由を推進する一方で、黒人、子ども、LGBTQの人々、スラムの住民など、周縁化された人々を犠牲にしてきた。本書では、ブラジル・リオデジャネイロ最大のファヴェーラであるホシーニャを舞台に、著者が規範的な自由観により生活を阻害されている人々がリベラリズムに挑む際に何が起きているのかを探求している。著者は、こうした周縁化された自由のビジョンを「マイノリタリアン・リベラリズム」と呼び、クィア、ファヴェーラ、農民といった重層的で代替的な自由のあり方を象徴する概念として提唱している。(The University of Chicago Press

ディスカッション
本書で語られている「自由」は、フィールドの人々が過去や現在に経験している不自由さから成り立っているという複雑な点が注目されました。また、その複雑性を理解するための方法論として語られているAssemblage(集合体)についても掘り下げた議論がなされました。本書は自由の複雑性を民族誌を通して描いている一方で、ファヴェーラの自由をマイノリティと表現することにより、人々の暮らしの多様性を過度に単純化しているのではないか、という意見がありました。著者が実践している自身のバックグラウンドがフィールドワークにどのような影響を与えているかを内省するReverse Anthropologyについて、これをideafundがどのように実践することができるのか、という議論も行われました。

プレゼンターから一言
自由のような抽象的な概念を理解する際に、具体を記述する民族誌の方法論が有効であることを改めて実感しました。人類学者がフィールドで起きていることを翻訳するメディアであるということを考えると、どのような人類学的調査においても自身の背景や立場を内省するReverse Anthropologyの実践は重要だと思いました。 (田口澪)

ideafundについて

「アイデアで資本主義を面白く」をコーポレートミッションとして掲げる株式会社アイデアファンドでは、文化人類学をはじめとするプロフェッショナルが集い、行動観察調査を通じてインサイトの導出や新しいビジネスシーズの創出に取り組んでいます。

代表取締役CEO:
大川内 直子(おおかわち なおこ)
会社設立:
2018年1月4日
事業内容:
文化人類学を応用した行動観察調査・分析・エグゼキューション
コーポレートサイト:
https://ideafund.co.jp/

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