アイデアファンドが現代人類学研究会に登壇します

株式会社アイデアファンド(本社:東京都港区)が、第131回 現代人類学研究会に登壇します。

本研究会では、ビジネス人類学の実践と、現代的なフィールドワークの可能性について、多様な立場からの実践報告と議論を通じて検討します。
ご関心をお持ちいただけましたら、ぜひご参加いただけますと幸いです。

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[第131回現代人類学研究会] ビジネス人類学と現代的フィールドワークの共鳴可能性:「アイデアファンド」の実践を通じて

  • 日時:2025年7月19日(土)14:00〜17:00(その後、懇親会・同教室で軽食あり)
  • 場所:東京大学 駒場キャンパス(18号館メディアラボ2・1階))
  • 申し込みフォーム:https://forms.gle/fxGgNMN3khzNjoJe6

【企画趣旨・趣意説明】

現代の社会・組織はその複雑性を増す中で、「文化的文脈をいかに捉え、解釈し、活用するか」が求められています。こうしたニーズに応えるかたちで、ビジネス人類学(Business Anthropology)は米国1970年代のマーケティング調査や製品開発への応用から始まり(Spradley & McCurdy, 1972)、2000年代にはUXデザイン、ブランド戦略、組織変革など多様な領域でその有効性と可能性が広がりました(Cefkin, 2009)。IntelやIDEOといった企業が参与観察やナラティブ分析を経営判断や製品設計に活かしていることは、その実践可能性の高さを物語っています。

しかしながら、ビジネスの現場では調査期間の短縮や即時的アウトプットへの期待が大きく、文化人類学の強みである「長期的な参与観察」や「厚い記述(thick description)」(Geertz, 1973)を十全に発揮することが難しいという現実もあります。こうした制約のなかで、調査の信頼性や倫理性をどのように確保し、複雑な社会的文脈をどこまで捉えられるのか。これは現代の応用人類学が直面する根源的課題の一つです。

このようなフィールドワークの短期化や断片化をめぐる問題は、ビジネス人類学特有の実務的課題にとどまらず、今日の学術人類学においても重要な方法論的論点として浮上しています。その代表的な応答のひとつが、Gökçe Günel、Shirley Varma、Chika Watanabe(2020)による「パッチワーク・エスノグラフィー(Patchwork Ethnography)」の提案です。

このアプローチは、長期的な参与観察が困難な状況を前提に、「断続的な接触」「多様な時間的・空間的断面」「協働的知の構築」といった柔軟な方法論を通じて、文化の複雑性にどのように接近しうるかを問います。ここには、制約のある現場でなお人類学的洞察を可能にする方法を探るという点で、ビジネス人類学と学術人類学とを横断する共通の問題意識が明確に共有されています。

【実践事例:株式会社アイデアファンドによる調査実践】

このような方法論的課題に対して、国内において先進的な実践を重ねているのが、株式会社アイデアファンドです。同社は「文化人類学の知見を現代のビジネス課題に応用する」ことをミッションとし、参与観察やデプスインタビューを基盤とする質的調査を中心に、企業の製品開発・ブランド設計・組織戦略などの意思決定に深い洞察を提供してきました。

近年注目を集めた事例として、サントリーと協働で行われた缶チューハイ開発のプロジェクトがあります。この調査では、従来型の消費者分析では捉えきれない、生活者の感性や嗜好の背後にある「文化的背景」や「日常の文脈」に着目し、参与観察によってその意味生成のプロセスを丹念に抽出しました。その成果は、商品コンセプトの精緻化や新規需要層への訴求に具体的に活かされたと報告されています。また別の事例としては、特別区長会調査研究機構の調査研究である、『区民等の理解と信頼を深めるための情報発信のあり方』の一環として、東京都区民の自宅における参与観察をアイデアファンドが担当しました。行政による情報発信が、その意図通りに区民に伝わっているのかという問題意識のもと、情報の受け手である区民が様々な媒体を通じてどのように情報に触れているかを基軸に参与観察を行いました。

さらに、アイデアファンドは調査と分析の分業にとどまらず、調査結果をもとにクライアントとの協働的な解釈とアイディエーションの場を設計する点においても特徴的です。報告書の提出に終始せず、ワークショップや戦略設計のプロセスを通じて「共に考える」ことを実践しており、これは人類学的知見を社会実装へと導くひとつのモデルケースといえるでしょう。

今回の研究会では、同社代表の大川内直子氏が、人類学的視座を企業活動に応用するうえでのビジョンと実践の背景を紹介し、リサーチャーの太田哲也氏が、フィールドにおける調査設計や運用の具体的な工夫について報告します。また、東京大学文化人類学専攻の博士及び修士課程に在籍し、調査に参与した閻美輪氏・竹中寛道氏が、リサーチアシスタントの立場から、現場で直面した課題とその乗り越え方、今後の展望について考察を加えます。

【登壇者紹介】

  •   大川内 直子(株式会社アイデアファンド 代表取締役CEO)

→ 2018年創業。「文化人類学をビジネスに翻訳する」パイオニアとしての視座から、企業における人文知インテグレーションの戦略と体制構築についてお話しします 。

  •   太田 哲也(同社リサーチャー)

→  特別区長会調査研究機構の調査研究の事例と、サントリーとの協動事例の概況についてお話しします。

  • 竹中 寛道(東京大学文化人類学修士課程・同社インターン生)

→  特別区長会調査研究機構の調査研究の事例を取り上げ、ビジネスの現場での調査における、参与観察時の問題意識と、それに呼応した対象との関わりについて発表します。

  •  閻 美輪(東京大学文化人類学博士課程・同社リサーチアシスタント)

→ サントリーとの協働事例を取り上げ、現場レベルでの参与観察の工夫、遭遇した制約、そこから得られた発見と今後への視座について発表します。

【コメント・討論】

  •   早川 公 (東京大学 先端科学技術研究センター 特任准教授)
  •   藤田 周 (東京外国語大学 TUFSフィールドサイエンスコモンズ 特任研究員)

応用人類学およびフィールドワーク論の観点から、早川公氏および藤田周氏をコメンテーターとしてお迎えし、実践と理論の双方から多角的な議論を深めてまいります

【研究会の主要論点】

  •  制約下における文化的厚みの把握と調査手法の工夫
  •   パッチワーク・エスノグラフィーとビジネス人類学の相互参照と理論的接続
  •   社会実装を担う実践者はいかに自身の立場を社会・クライアントに位置づけるか
  •   実践と研究の協働による知の共創モデルの構築可能性

本研究会は、ビジネスと人類学、短期性と厚み、即応性と批判性といった複数のテンションを架橋しながら、応用人類学における方法論と倫理の現在を問い直す試みです。多様な立場の参加者による、豊かな対話と創造的批判を歓迎いたします。

ideafundについて

「アイデアで資本主義を面白く」をコーポレートミッションとして掲げる株式会社アイデアファンドでは、文化人類学をはじめとするプロフェッショナルが集い、行動観察調査を通じてインサイトの導出や新しいビジネスシーズの創出に取り組んでいます。

代表取締役CEO:
大川内 直子(おおかわち なおこ)
会社設立:
2018年1月4日
事業内容:
文化人類学を応用した行動観察調査・分析・エグゼキューション
コーポレートサイト:
https://ideafund.co.jp/

本ニュースリリースに関するお問い合わせ先
info@ideafund.co.jp