勉強会開催報告:『場所の現象学-没場所性を超えて』
株式会社アイデアファンド(本社:東京都港区)は、2024年1月19日及び2月22日に、『場所の現象学-没場所性を超えて』(エドワード・レルフ 著 / 高野岳彦、阿部隆、石山美也子 訳)を題材として、現代の街づくりに対する姿勢・有り方をテーマに社内勉強会を開催しました。
本書の概要
人間が生きるということは、身の回りの空間や環境に自分なりの様々な意味を与えることと同値である。自らの直接経験による意味づけによって分節した空間が、すなわち「場所」である。場所は、大量生産と商業主義が深化した現代においては、多様だったはずの意味や環境適合性を欠落させ、お仕着せのものとなり、「偽物の場所」のはびこる「没場所性」に支配される。本書は、ディズニー化、博物館化、未来化などの現代の没場所性の特徴を暴き出し、キルケゴールやカミュやリフトンらの文学や哲学の成果も動員しつつ、場所に対する人間の姿勢と経験のあり方を問う、現象学的地理学の果敢な挑戦である。(ちくま学芸文庫)
ディスカッション
多様性が失われ、標準化された「没場所性」の存在が認められる一方で、その中にも多種多様な人々の生活が存在するという意見が出ました。また、本書は全体を通して本質主義的な雰囲気を持ち、現代の文化人類学とは異なる側面があるとの指摘や、本書はポストモダニズムの流れの中で登場したため、主張の偏りが顕著になっていると感じる参加者もいました。本書で述べられている、理解したり伝えたりすることが難しい場所の「本質的特質」は、文化人類学的視点やフィールドワークを用いて明らかにできるという意見が共有されました。
プレゼンターから一言
本書でカテゴライズされている、場所に対するアイデンティティや態度は、外部性と内部性を持ち合わせる人類学者の在り方と重なる箇所が多くあり、場所づくりを考える際にこのような姿勢が重要であるという再認識ができました。本書では場所づくりの過程や方法、周辺景観との調和次第で「没場所」的になり得る、という議論が多くありました。僕はそれに加えて、物理的環境に関わらず、そこにいる人々の振る舞い方や関わり方によって、場所の在り方は大きく変わると感じました。そのため、人々が「没場所」ではなく「場所」を感じられるように、人類学者が外部の調査者としてだけでなく、内部の一員として人々に変容をむしろ積極的にもたらしにいく、意志や素養が必要であると思いました。 (田口澪)
ideafundについて
「アイデアで資本主義を面白く」をコーポレートミッションとして掲げる株式会社アイデアファンドでは、文化人類学をはじめとするプロフェッショナルが集い、行動観察調査を通じてインサイトの導出や新しいビジネスシーズの創出に取り組んでいます。
- 代表取締役CEO:
- 大川内 直子(おおかわち なおこ)
- 会社設立:
- 2018年1月4日
- 事業内容:
- 文化人類学を応用した行動観察調査・分析・エグゼキューション
- コーポレートサイト:
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