訪日観光客のカフェ利用に関する文化人類学的調査
調査概要
インバウンド向けの新規事業を検討するクライアントからの依頼で、訪日外国人に人気のある東京近郊のカフェ・喫茶店の実態を探るために、文化人類学的観点を用いて調査を実施した。
調査手法
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基礎調査
まず、訪日外国人が店選びの参考にしている複数のグルメサイト等について、デスクリサーチを実施した。 -
人気の傾向・要因に関する分析
スターレーティングや口コミの定性分析を基に、東京近郊の人気カフェTOP100を独自に選出。
そのランキングの中から、インバウンド旅行者に特別なエクスペリエンスを提供しているカフェ12店舗を選び出し、立地、サービス、ブランディングに至るまで詳細な分析を行った。 -
口コミのテキスト分析
選出した100店舗について、偏りを避けるために店舗ごとに複数の情報ソースから英文口コミを収集。全口コミをデータ化し、テキストマイニング+定性分析を行うことで、インサイトを導出した。
調査結果
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訪日外国人に人気のカフェTOP100店舗とその地理的分布の傾向を見つけ出した上で、観光行動との関連性を分析。
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カフェの中に存在するバリスタや焙煎機という物理的なモノから、音楽やシングルオリジンコーヒー、スペシャルティーコーヒーという概念的なモノまでの連関をActor Network Theoryをベースに捉えなおした。これらのモノがカフェという空間の中で、あるいは日本旅行というエクスペリエンスの中で、どのような効用をもたらしているのかを明らかにした。
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来日時にカフェを訪れる人々が「日本特有の日本茶、ラテアート、喫茶店を求めているのか」あるいは「母国にあるような馴染み深いコーヒー体験を望んでいるのか」といった文化的側面を考慮した分析を、各店舗について行った。
ポイントと成果
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今回の調査・分析の過程では、公開情報やテキスト分析用ソフト等を活用し、短期間で鋭いインサイトを導き出すことができた。
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口コミなどのデータを収集してビッグデータとして定量分析するだけでなく、その結果に更に定性的な分析を加えることで、オンラインエスノグラフィーに近い深い調査が可能となった。
- 今回の調査を更に深めるためには、実際の旅行者に帯同しながら参与観察を行うことも重要であることが示唆された。ある旅行者が日本を訪れ、去るまでの一連の時間のなかでカフェ体験がどのように位置づけられているのか、それをさらに素晴らしいエクスペリエンスにするためにはどのような要素がキーとなるのかについて、人類学者によるフィールドワークを追加で実施することが計画されている。
ideafundについて
「アイデアで資本主義を面白く」をコーポレートミッションとして掲げる株式会社アイデアファンドでは、文化人類学をはじめとするプロフェッショナルが集い、行動観察調査を通じてインサイトの導出や新しいビジネスシーズの創出に取り組んでいます。
- 代表取締役CEO:
- 大川内 直子(おおかわち なおこ)
- 会社設立:
- 2018年1月4日
- 事業内容:
- 文化人類学を応用した行動観察調査・分析・エグゼキューション
- コーポレートサイト:
- https://ideafund.co.jp/
本ケーススタディに関するお問い合わせ先
info@ideafund.co.jp